EB-165 National 1957年(昭和32年)発売,販売価格13900円,外寸 約142×84×41mm, 電源は4AAタイプの6V電池(現在は入手不能なので単3電池4本で動作),6石TRラジオ 受信周波数 MW 540〜1600 Kc/s (と内部のシールに記入されている) 適度な大きさとシンプルなデザイン,落ち着いた自然な色使いで,好きな機種の一つです。これも昭和32年にデザインされた物とはとても思えない製品です。この機種はSONYのTR−84(昭和34年)やTR−716(昭和35年)のように受信周波数表示板の640kHzと1240kHzにマークがついていません。アメリカに向けての輸出はされなかったのでしょうか。 使用トランジスタは当時の回路図によると以下の通りです。 周波数変換TR1 -------------- 2T512 (2SA44) 第一中間周波増幅TR2 -------- 2T551 (2SA55) 第二中間周波増幅TR3 -------- 2T551 (2SA55) 低周波増幅TR4 -------------- 2T65 (2SB171) B級プッシュプル増幅TR5&TR6 --- 2T65 (2SB172) ×2 トランジスタ 2T*** はソニー製のNPN型で発売当初のものに使用されました。 2SA** と 2SB*** は松下製のPNP型で昭和35年頃の物のようです。このラジオのトランジスタは松下製が使われています。この頃,松下は自社製のトランジスタ製造が間に合わず,ソニーから供給を受けていたようです。 この機種はインターネットオークションで見つけました。きれいにしっかり修復された機種のようなので,最終落札価格はかなり高くなるのかなと思ったのですが,手間をかけた出品者には申し訳ないような価格での落札になりました。出品者によってなされた整備は以下の通りです。 ☆整備内容(主要な項目のみ記載) ・キャビネット、SPパネル、ダイアルエスカッション、ツマミ類、ジャック類全て洗浄清掃。 キャビネット、裏蓋とも全般に色のくすみ、変色があります。 ・裏蓋の一部、キャビネット左下角にヒビあり、修復。 ・SPパネル、錆取り研磨後、再塗装(オリジナルとほぼ同等のシルバー)。 ・ダイアルグリル、一部割れ修復後、再塗装(オリジナルとほぼ同等のシルバー)。 ・電解コンデンサ2個新品追加(プリント基板裏面へ取り付け)。 ・SP配線がEPジャック部で断線、修復。 ・電池スナップ新品に交換、単3型×4本電池ホルダ追加。 ・裏蓋内側のシール、オリジナルはボロボロでしたので復元シールを貼り付けています。 ・再調整。 他の人が修復した実物を見せてもらうのは初めてで,大変勉強になりました。その後,メールでお願いして回路図を提供して頂いたり,細かい質問に答えてもらうなど,価格を超えた収穫があった機種でした。安い落札価格であったにも拘らず丁寧に対応して頂いた出品者には大変感謝しています。参考になりそうないくつかをあげておきます。 ・キャビネットのヒビに用いた接着剤は? =>接着剤は市販のものですが、アロンアルファのゼリー状の瞬間接着剤です。 液状のものは、キャビネットの材質によっては後で変色や変質する場合があり、 余り良く無いようです。 ・キャビネットの欠けた部分の修復は? =>エポキシ系2液性のパテです。 ・裏蓋内のシールは? =>シールは写真で復元しています。シール原紙は耐水性、耐候性の物です。 ・イヤホーンジャックは現在の規格と違うが? =>イヤホーンは、いわゆるクリスタルタイプです。 電圧駆動の為パワーアンプの出力から82KΩの抵抗を通しているようです。 SPパネルは錆取り研磨後,オリジナルとほぼ同等のシルバーに再塗装したとありますが,これがうまいです。まったくピカピカではなく経年変化をそれなりに感じさせる程度の自然な再塗装になっています。ダイヤルグリルの再塗装も同じです。大変参考になりました。裏ブタ内面の網の接着も自然ですし,シールの復元には脱帽です。 裏ブタはねじ止めではなく,下二箇所のツメと上部の金属板ばねで固定されているだけです。 裏蓋内側の復元シールです。 欠けてしまった基盤固定用ねじを取り付けるキャビネット部分もしっかりパテで修復されています。 スイッチ付きボリュームは好きでないので,SONYのTR−84と同様に電源スイッチをつけるジャックを増設することにしました。現在とは規格の異なるクリスタルイヤホンジャックがキャビネットに直接ねじ付けされているのではなく,ジャックの固定されたプラスチック台座がスライド式に取り外せるようになっているので,これを利用することにしました。同じ台座をアクリル板で作成し,これにジャックをねじ止めすることにします。オリジナルの台座もそのまま残しておいて,どちらも使用できるようにしました。 電源スイッチプラグを差し込んだところです。オリジナルのイヤホンジャックは空いたスペースに電気的接触を防ぐようにビニール袋で包んで押し込んでおきました。 適度な調整で音質もまあまあです。貴重な一台となりました。 ------------------------------------------------------------------------------------- 1957年(昭和32年)のできごと 1月 7日 ラジオドラマ「赤胴鈴之助」放送開始(ラジオ東京) 武内つなよし原作「少年画報」連載漫画のドラマ化 出演者:吉永小百合,藤田弓子,山東昭子,・・・ 1月29日 南極観測開始「昭和基地」開設(西オングル島) 2月24日 世界平和アピール七人委員会,英国水爆実験予告に抗議する決議文発表 (前田多門,茅誠司,湯川秀樹,平塚らいてう,上代タノ,下中弥三郎,植村環) →5月15日 英国,水爆実験強行 2月25日 第一次岸信介内閣成立 2月28日 南極観測船「宗谷」,氷に閉じ込められ(19日), ソ連砕氷船「オビ号」に救援され脱出 3月22日 ダークダックス,第一回リサイタル(ヤマハホール) 3月26日 防衛大学校第一回卒業式 4月12日 ゲッチンゲン宣言 (西独 マックス・プランク研究所の物理学者18名, 核兵器製造実験への非協力を宣言) 5月15日 英国,水爆実験強行(中部太平洋クリスマス島) 米国,ソ連についで3番目の水爆保有国となる 5月 8日 コカ・コーラ,国内販売開始 6月14日 第一次防衛力整備計画大綱(三ヵ年計画)を閣議了承 昭和32年陸上自衛隊16万人→昭和35年陸自18万人目標 自衛隊の設立経緯 朝鮮戦争:1950年6月25日 - 1953年7月27日停戦 昭和25年8月 警察予備隊 昭和27年4月 海上警備隊 8月 保安隊(陸上),警備隊(海上) 昭和29年 航空部隊 昭和29年7月 陸海空三自衛隊(陸自11万人) 7月 1日 国際地球観測年開始(昭和33年12月まで),世界の60以上の国が参加 観測協力12項目→オーロラ,大気光(夜光),宇宙線,地磁気,氷河,重力, 電離層,経度・緯度決定,気象学,海洋学,地震学,太陽活動 主な成果→バン・アレン帯発見,中央海嶺,プレート・テクトニクス説の確認 日本は南極に昭和基地を建設し,観測に協力。12のすべての部門で協力。 7月24日 東京都,都市人口世界一(東京851万人,ロンドン825万人) 8月 1日 東京都内の主要デパート,食料品軽量をメートル法に切り替え 匁→グラム,合→立方センチメートル 8月27日 日本初の原子炉稼動 日本原子力研究所(東海村)の第一号実験原子炉JRR-1(沸騰水型) ノースアメリカン社製,最大出力50kW,沸騰水型では世界で9番目, アジアでは2番目(インドの次ぎ),この時点で世界では70以上稼動 9月 1日 日本初の盲導犬誕生 9月 7日 トヨタ自動車のトヨペットクラウン見本車2台アメリカ上陸,輸出開始 9月23日 主婦の店「ダイエー」一号店開店(大阪市,床面積30坪) 10月 第一回グッドデザイン「Gマーク」製品:キャノンカメラL1と8T 10月 1日 新5千円札発行 10月 4日 世界初の人工衛星「スプートニク1号」(ソ連)成功 国際地球観測年活動の一環,直径58cm,83.6kg 10月22日 目の銀行「アイバンク」発足(角膜移植用) 11月 フランク永井「有楽町逢いましょう」(日本ビクター) 作詞:佐伯孝夫,作曲:吉田 正 11月 3日 人工衛星「スプートニク2号」 (ライカ犬同乗,1週間生存,衛星重量500kg以上) 12月11日 百円銀貨発行 12月16日 東京湾「夢の島」(ゴミ埋め立て開始) 12月24日 NHK,FM実験放送開始(東京実験局,出力1kW,19:00〜21:00) 12月28日 NHKと日本テレビ,カラーTV実験放送開始(30分〜1時間) 12月 年間映画観客数10億人超過,日本映画の黄金期!! (昭和33年は11億人で,史上最高記録) 日本人1人が年間平均12回映画鑑賞,1日当り300万人の観客動員 話題の映画:「旗本退屈男」,「笛吹童子」,「銀座のお姉ちゃん」, 「二等兵物語」,「銭形平次捕物帳」,「社長三代記」, 「嵐を呼ぶ男」,「ギターを抱いた渡り鳥」 昭和32年の物価 東洋レーヨン男子従業員平均月給:事務・技術職員36歳・勤続12.6年 =>3万6771円, 工員30歳・勤続9.2年 =>1万9699円 タクシー初乗り料金 小型70円・中型80円,駅弁(幕の内弁当)100円,缶ジュース40円, 銭湯入力料15円,サントリーオールド1600円,LPレコード2300円,トヨペットクラウン89万円, 映画自由席250円,住宅公団アパート賃貸料月額(東京都江東区13坪)4800円 |